執事喫茶スワロウテイル その③
大変おいしいスコーンとお紅茶をいただき、あたたまってきたわたくしは、いけないと言われていた
「勝手にお皿を変えたり、紅茶を注いだりする」(使用人がすっとんでくる)お転婆をやりたくなってしまいました。
しかし、周囲を確認し、いたずらを企てるわたくしの様子か、表情か、使用人の椿木さんは何かを察したようで
「いかがなさいましたか?」と席にやって来てしまいました。
ここは、ごまかさずに、
「いいえ、わたくしから、お姉様にお茶をお注ぎしたいと思うの。」
「左様ですか。しかしお嬢様、それは私どもにお任せください。」
ここでは、引き下がらずに、
「どうしても、いけない?」
「万が一、お嬢様のお召し物をお汚しになるようなことがあってはいけませんから。」
「そうなのね。ごめんなさい。」
封じられてしまった。
(続・やりますわよ)
しかし、好奇心は収まりませんので、タイミングを狙い続けました。
サンドイッチ(すごく美味しかった)やキッシュ(すごく美味しかった)をいただき終えた頃、ついに、椿木さんのいない隙ができましたので、お皿を自分でティースタンドに戻し、デザートの盛り付けられたお皿と取り替えて置いてみました。
そうしましたら、すぐに、他のおじ様執事がお気付きになり「あら、あらあらあら!」と本当に飛んでまいります。
「お嬢様ったら、社会勉強が進みすぎて、何でも自分で出来ちゃうんですから!」と、優しい言い方で、面白うございました。(後でお名前を聞いたところ、香川さんとおっしゃいました。)
「ごめんなさい、椿木さんには秘密にしてくださる?」
「もう、お嬢様ったら」みたいなことを言い、デザート用のスプーンとフォークを用意してくださる。
「ありがとう、椿木さんには言わないでね。」と念押してお願いしました。
また、今なら、他の使用人を呼べるのかな?と気になり、椿木さんが戻っていないことを確認し、ベルを触ろうとすると、
背後から「お呼びでしょうか、お嬢様?いかがなさいましたか?」と、スッと現れる椿木。
「!?」
言葉につまる私に、お姉様が、機転をきかせお花摘みを申し出ると、行きも帰りもエスコートがつきました。(すごい)
(とっても満足)
すっかり楽しくなり、お姉様と、本当にすごいね、楽しいねえ、胸いっぱい、素敵だねえなんて言い合い、遠くの椿木を見つめましたら、目が合い、また「お呼びでしょうか?」と来てしまいました。
「ごめんなさい、用事はないのよ。」
(本当に、見てただけ。)
「忙しいのにごめんね、ありがとう。」
「いえいえ、お時間までどうぞごゆっくり。」
時間も迫り、せっかくですので、さっき飛んできてくれた執事のことも
「あなた、ちょっとよろしい?」と呼び止めます。
「いかがなさいましたか?」
「さっきはありがとう。あなた、お名前はなんて言ったかしら?」
「香川と申しますが、そんな、使用人の名前など覚えていただかなくてよろしいのに!」
「香川さんね、また、よろしくね。」
(80分間があっという間)
テーブルでお会計(社会勉強)を済ませ、「お嬢様、お出掛けのお時間です」と執事が迎えにくるまで、大いに満喫いたしました。
お見送りは、「またのご帰宅をお待ちしております。行ってらっしゃいませ。」
すっかりお嬢様ですから、「ええ、みんな元気でね。」とサラリと出発してみました。
また絶対帰宅しようねと思う。次はディナーで。
ああ、お父様に買っていただいた、愛馬のバニラちゃんが元気にしているかも、使用人に聞き忘れないようにしなくちゃね。